「リボーン」孤高のライオンとプライドたちの物語Season2|ティラノサウルスに食べられてしまうヤギ(筆者)

「羊の皮をかぶったヤギ(ヤギ)」と呼ばれた筆者(ヤギ)が、この物語の主人公である慶二(以降“ライオン”と呼ぶ)にエサだと認識されたのは、恐らく高校2年生の終わり、福岡県博多の森で行われた全国選抜(当時は団体戦のみ)からであろう。

一応説明しておくが、ライオンのエサだったヤギ(筆者)は、この物語の時点(高2)で全日本ジュニアシングルスベスト8に入っていた。

ベスト16で第2シードだった原田夏希を文字通り「粉砕」して勝ち上がってきた四日市工業高校の永井を打ち破ってのベスト8だ。

四日市工業高校

四日市工業高校といえば、筆者の大学の大先輩でもある寺村和章さんを思い出す。フォアハンドの達人であり「調子が良い時は面が上を向くんだ」と真剣に筆者にフォアを教えてくれていた、三重県が生んだ最初のインターハイシングルスチャンピオンだ。

その四日市工業高校は、現在は母校出身で法政大学に進みインカレシングルスベスト4の実績を挙げたあの徳丸真史選手が監督を務め名門を系譜している。

徳丸監督は大学進学時点から「四日市(工業高校)に戻って監督になるのが夢」と語っていた熱い男で、中学生のお子さんを持っている親御さんは是非一度四日市工業高校の練習を見に行ってほしい。

当時の永井はまさに全盛時で、この大会では日本一を狙っていたはずだったが、まさかヤギに足元をすくわれるとは想像だにしていなかっただろう。それもそのはずだ。永井に勝つなどヤギですら想像していなかったのだから。

神戸総合運動公園ユニバー記念競技場内のオムニコートで、ベーライから20mくらい下がり、左右に振られては隣のコートまでボールを追い続け、時にはラケットを左手に持ってダイビングしながらボールを追い続けた記憶が鮮明に残っている。

ボールを拾いまくる筆者

こう書くと筆者を知らない読者は増田健太郎や伊藤新君のような鬼のフットワークを想像するかも知れないが、筆者は鈍足(どんそく)だ。テニス界鈍足ランキングなるものがあったなら、TOP3には確実に入るであろう。

恐らくだが谷澤のほうがまだ筆者よりは足が速いし、筆者より足が遅いテニス選手は、「2.5トンブラザーズ」として絶賛売り出し中の島田先輩か御子柴先輩(共に筆者の高校の大先輩)くらいであろう。

御子柴・島田の2.5tブラザーズ

その筆者が、鈍足を飛ばして!?ひたすら永井の強打をダンロップのMax200Gで拾いまくり耐えまくった。

「これ、何のプレイ?新手のSM?」

というようなポイントが永遠に続き、あれだけ筆者が下がっていたのだからドロップショットでも打てばいいのに、ヤギごときに小細工を使うのはプライドが許さなかったのか、それとも永井は石井弘樹のような変わった性癖を持っていたのかは知る由もないが、若き日の石井弘樹に勝るとも劣らない豪打にこだわった永井は、筆者のカメディフェンスの前に自滅していった。

どうでもいいことだが、前作の主人公だった弘樹と永井は親友だ。類は友を呼ぶとはこのことなのだろうか。

筆者の同期でもある石井弘樹と永井貴士
石井弘樹と永井貴士
画像引用元:石井弘樹公式ブログAll for one

フロックとはいえ、仮にもこうして全国ベスト8入りしていたヤギ(筆者)は、世間が言うほど弱くはなかったはずなのだが、こうして書いていてもペンを持つ手が小刻みに震えている。

やはりどう考えても筆者(ヤギ)が強いはずはなかったからだ。

なんせヤギ小屋の周りにいたのは、最も弱い動物がジャガーやヒョウで、トラやライオン、巨大なサイ、カバ、女子の中には大きなキリンもいたし、このほにゃらら動物園内では象でさえまだ最強とは言えなかった。なぜなら動物園のはずなのにジュラシック、しかもTレックス(ティラノサウルス)が複数頭園内に迷い込んでいたからだ。

ジュラシックパーク

失われた20年だのデフレ経済だのと言われて久しいが、本当のデフレとは何かを筆者はどの専門家よりも詳しい自負がある。なんせ30年以上前からすでにデフレ経済を身をもって体験していたのだから。

【筆者(ヤギ)が強豪校に転向した初日の貴重な映像】

筆者の周りにいた猛獣たち(女子含む)は、ほぼ全員がなんらかの大会で日本一になり、全日本選手権優勝は通過点でしかなった。

常に世界を見据えて戦っていた連中に囲まれていた筆者の「全日本ジュニアベスト8」などというチンケな戦績は「無いに等しい」「エイトって何?予選会?」という世界であり、せいぜい自動販売機の中に1本だけ売っている「ちょっとたけえな」と感じるレッドブル程度の価値しか筆者は持っていなかった。

レッドブル

当時小鹿だと思って横堀由紀ちゃん美紀ちゃん姉妹らとともに実の弟妹のようにかわいがっていたサトシ(岩渕)はシングルダブル合わせて10回くらい全日本で優勝して今や東京オリンピックの監督をやっているし、愛ちゃん(杉山)に至っては銀河系にまで旅立って行ったので、facebookでは友達申請ボタンを押す指が震えるのでいまだに友達にすらなっていない。

久しぶりに愛ちゃんに再会しても話しかけるのを躊躇した挙句、あやうく「杉山さんお久しぶりです。僕のこと覚えていらっしゃいますか?」と敬語を通り越して謙譲語を使いそうになるのも無理はないだろう。

余談になるが、映画ジュラシックパークではヤギがTレックス(ティラノサウルス)に食われるシーンがあったことを突然思い出した。

是非読者諸君もジュラシックパーク1を見てみてほしい。筆者(ヤギ)が当時どのような立場だったか一瞬で分かるシーンである。トイレに座ってTレックスに食べられていたのが筆者なのかヤギが筆者なのかは読者の想像にお任せする。

Tレックスに食べられる筆者

続く