この記事に書いてある事
  • 文理系とも優れていないと上位校は狙えない
  • 大学レベルのクラスを積極的に取りGPAを上げる
  • 高校在学時に大学に籍を置き授業を取ることでさらなる評価に
  • 課外活動でリーダーシップとタイムマネージメント能力をアピール

文理系とも優れていないと上位校は狙えない

アメリカの大学入試は、高校での成績と共通テストの成績、そして課外活動、学校によりエッセイ、有名私立校はさらに面接も必要です。これを見て日本のような一発入試ではないことをもって「アメリカの大学は入るのは楽で出るのは大変」という多大なる誤解があります。

確かに共通テストは通常入試で願書を出す場合、高校最終学年の12月までであれば(学校によって例外あり)いつ受けてもよく、SATもACTも一年に7回受けられるというのは日本よりも楽です。ほとんどの大学でSATとACTのどちらの点数でも受け付けてくれます(東海岸ではSAT、西海岸ではACTがより人気があります)。

ACTとSATの試験日
Source:https://www.smuhsd.org/

SATとACTはタイプが違うので、いきなり本テストを受けるよりも、過去問題をやってみてどちらのテストが自分に向いているのかを判断し片方に絞れりとより効率がいいようです。好みがそれぞれあるのでどちらがお勧めとはいえません。

模試のようなものはなく、実際のテストを何度も受けるのはお金と時間の無駄なだけでなく、大学によってはすべての共通テストの点数を要求することもあります。あまり多く受けていると印象が悪くなるようです。優秀な子は勉強せずに受けて満点、ということも珍しくありません。

SATやACT専門の塾に行く生徒もいますが、何千ドルも払っても点数が大幅に伸びることは稀なので、問題集を買って勉強するのが一般的な勉強法。アメリカの高校生は課外活動に忙しいので塾に行っている時間がない、という現実もあります。

問題集にはオンラインにアクセスするコードが付いてきて、タブレットやスマートフォンでも勉強できるので便利です。

ACT問題集
Source:https://www.efficientlearning.com/

日本と大きく違うのはテスト内容。全教科ある日本の共通テストと違い、SATは英語(Critical Reading)、数学とライティング(ライティング部分は総合点には関係せず別採点)、ACTは英語(English)、英語の読解(Reading)、数学、理科(理科というよりもデータを読み取る数学的な要素が強い)とライティング(ライティングは別採点)。ACTは細かく分かれてはいても、大まかにいうと英語が半分、数学が半分です。

SATの満点が1600、ACTの満点が36、ライティングの点数は総合点には含まれないので、そう気にする必要はありません。もちろんテストによって難易度の差があったり、母集団(テストを受ける生徒の頭のよしあし)の違いがあり相対評価です。難しいテストの場合全問正解でなくても満点を取れます。

反対にテストを受けて簡単だったと思っても、他の人にも簡単であればあまり高い点数が出ないこともああり、自己採点はあまり頼りになりません。

アイビーリーグ校の共通テストの点数を参考までに載せておきましょう。合格者の上位25%と下位25%を除いた点数の範囲です。例えばハーバードは1600~1490です。ということは最低でも上位25%以上は満点を取っているということ。ただし下限の1490を見て「自分にもチャンスはあるかも」と考えるのは残念ながら間違いです。これはアスリート枠や縁故枠であるレガシーで入った生徒の点数だからです。

これを見るとアイビーリーグ校に入るには共通テストの点数は満点で当たり前、というのが分かります。

アイビーリーグテストスコアー
Source:https://www.quora.com/

アメリカの共通テストは英語と数学が半々なので、得意科目が文系か理系に偏っていると高得点を出すのは不可能、ということが決定的に日本の受験と違います。日本のセンター試験は文系なら英語や歴史で、理系なら数学や理科で不得意分をカバーすることができます。

さらに日本では得意科目が文系か理系に偏っている場合、国公立は諦め私立大学に絞ることも可能です。アメリカでは州立でも私立でも志望学部が文系でも理系でも、さらにはアスリートであっても必ず英語と数学が半々である共通テストを受けなくてはなりません。

「アメリカの教育は個性を大事にする」というは大きな誤解。アメリカは文系科目も理系科目もできないと大学入試には大変不利です。学校の成績も全教科の平均ポイントをみられます。どの科目も5段階評価の5に相当するAを取っていないとアイビー校はもちろん日本でも知られているカリフォルニア大学校(UCバークレー、UCLA、など9校)の中堅校さえ狙えません。

ただし、得意科目がいかに優れているかを願書に書ける方法があります。SATにはさらにSubject Testというものがあり、一教科だけテストを受けることが可能。下記に説明するAPテストは一年間のAPクラスを経て受けていないと実質合格しないのと比べると、もう少し気軽に取れるテストです。

SAT Subject テスト
Source:https://guidedpathedge.com/

APテストよりやや簡単とはいえ上位大学では専攻に関するSAT Subject Testを要求することがほとんどなので、受けておくべきテストです。Subject Testの点数を要求しない大学でも「オプションとしてSubject Testの点数を提出することはできる」という学校もあります。

大学レベルのクラスを積極的に取りGPAを上げる

共通テストの英語と数学の両方で高得点、どの教科でもAを取れば安心、なのでしょうか?そう簡単にいかないのがアメリカの大学入試。高校の普通の授業を取っているだけではまず上位校は狙えません。高校にはオナーズクラス(Honors)とAPクラス(Advanced Placement)という大学レベルとされる授業があり、それをいくつも取る必要があります。例外は通う高校でそういう授業がオファーされていない場合(大学はどの高校でどういうクラスが取れるのかすべてを把握しています)。

高校の普通クラスでA(日本の5に当たる)を取るのは当たり前、大学レベルの授業でAを取ってこそ評価され、どんどん競争が激化し高校生の勉強のプレッシャーは想像を超えています。その理由は、高校の普通クラスだけだと優秀な子であればAを取るのはそう難しくなく、それだと一つの高校で何百人もの生徒がオールAであるGPA 4.0(GPA:Grade Point Average)を取れてしまい、生徒間の差がつかないからです。

オナーズクラスやAPクラスでAを取るとGPAのポイントが加算され、4.0以上のポイントを取ることが可能になってきます。ただしオナーズクラスは州内の大学に出願する時のみの加算なので(例外あり)、州外の大学も考えている生徒はAPクラスを取った方がいいでしょう。

オナーズクラスとAPクラスの計算式
Source:https://gpacalculator.net/
*オナーズクラスのポイントの加算は高校によって違うので参考までに
 College=APクラス

ここで注意して欲しいのは、GPAを上げたいがために無理して大学レベルのクラスをスケジュールに入れてしまい、Aが取れずB(大学レベルのBは普通クラスのAと同じGPAポイント)ならまだしもCを取ってしまうとGPAを大きく下げてしまいます。それなら普通クラスで確実にAを取った方がストレスも少なく、成績を下げてしまうリスクもありません。

「BやCでもAPクラスをたくさん取ることで積極的だと評価されるので挑戦した方がいい」、という見方もありますが、私の周りにそれで成功した人は少数です。かえって普通クラスですべてAを取りGPA 4.0を保った生徒の方が結果が出ています。

アメリカの普通クラスの授業は成績上位者には簡単です。そのためあまり深く考えずAPクラスをたくさん取ってしまい、うまくいかない例をたくさん見てきました。普通クラスとAPクラスには驚くほどの差があるのです。

それでもAPクラスの修得が人気なのは、成績を上げられるだけでなく、毎年5月に行われるAPテストで基準を超える点数を取れば大学の単位として認めてもらえるから、というのもあります。最高点は5、通常3以上取れば合格です。ただし大学により4以上しか認めないところ、専攻科目なら5以上、など基準が違うので志望校のウェブサイトで詳細を確認してください。

APテスト
Source:https://thermtide.com/

ひと昔前は一学年に一つか二つ得意科目でオナーズクラスやAPクラスを取れば上位校に合格できていたのに、今では大学入試で最重要視される10、11年生(日本の高校1、2年生)のほとんどのクラスがAP、でないと上位校合格は難しくなり、ますますAPクラスの需要が高まっています。

息子たちの通った高校では校長先生が生徒のメンタルヘルスを懸念し、一学年中に取れるAPクラスの数を制限するに至りました。これに対し親は「大学入試で不利になる」と猛反対。でもこれは生徒にアンケートを取った結果です。「大学側にこの高校ではAPクラス取得に制限があると知らせているので不利はない」、と校長先生は親に伝えました。

APクラスをむやみに取ることでgrade inflation、成績のインフレが起きGPA 5.0などというとんでもない成績を取る子が続出し、高校生の精神面へのプレシャーが問題になり始めてからかなりの年月になります。やっと対策を取り始めた学校が出てきた、という段階です。

高校在学時に大学に籍を置き授業を取ることでさらなる評価に

共通テストでの高得点、高校で大学レベルの授業を取ることで安心、と思っていたらまだまだ先があるのがアメリカの大学入試。これが「入るのも出るのも難しい」と言われるゆえんです。さらにライバルに差を付けたい子は地元の大学で授業を取ることまでしています。特に人気があるのはコミュニティーカレッジと呼ばれる短大。高校の許可さえあればコミュニティーカレッジの授業は州により無料になるからです(アメリカは高校までは義務教育で、公立高校は無料)。

コミュニティーカレッジで取った単位はで州内の大学に入った場合単位に換算してくれるので、卒業が早くなるというメリットもあります。

どんな授業でも取れるわけではなく、通う高校でオファーされていない授業というのが基本。ただし誰でも授業が取れるコミュニティーカレッジとはいえ大学は大学です。高校よりも進み具合が早いので(高校では一学年かけて履修するところ、コミュニティーカレッジでは一学期で履修)、得意科目以外を取ると優秀な高校生でも苦戦することがあります。

あくまで大学の単位なので高校のGPAには含まれませんが、悪い成績であろうと願書に記載する必要があるのであまり印象がよくはありません。絶対にAが取れる自信がなければやめておいた方が賢明です。これはコミュニティーカレッジから4年制大学に編入(このシステムについては別記事で)する場合も同じ。

コミュニティーカレッジから4年制大学に編入する場合、高校の成績は帳消しになり一からのスタートになるのに、高校の時に取ったコミュニティーカレッジの成績は大学の成績としてそのまま残ります。大学院に進学の際もついて回ることになるので、気軽に取ることだけはやめましょう。ただし落第点(DかF)を取った場合は学校の許可をもらい再履修し、成績を入れ替えることは可能です(B、Cの場合認められません)。

落第点(アメリカ)
Source:https://collegexperience.net/

コミュニティーカレッジの授業が難しくて好成績を収められそうにないと分かった時は、悪い成績を残すよりも履修をキャンセルすることを勧めます。早い段階で止めれば成績表に反映されず、一定の期日が経っていても期限までにキャンセルすれば、成績表にはW(withdrawal)と付くだけで成績には影響しません。

BならまだしもCを取ってしまうと将来コミュニティーカレッジから4年制大学に編入しようする場合、専攻科目であれば他の科目全部がAでも自動的に不合格になることさえあります。履修のキャンセルは早いうちの決断が必要です。

高校に籍を置いたままコニュニティーカレッジのクラスを履修する方法はいくつかあります。
1.夜のクラス(一学期)か夏休みのクラス(6週間)
2. コミュニティーカレッジから認定された高校の先生が在籍校で行う特別授業
3. Dual Enrollment(10~12年生時にコミュニティーカレッジでいくつかの授業を取る)

2と3は限られた学校にしかない制度なので、1の方法が一般的です。

課外活動でリーダーシップとタイムマネージメント能力をアピール

共通テストで高得点を収め、APや大学の授業を並行して取り、これで完璧、であれば簡単です。ある意味勉強しさえすればいいのですから。そうでないのがアメリカの大学入試の難しさ。

出願する大学のレベルが高ければ高いほど課外活動が重視される傾向にあります。上位校ではさらにその内容も大切です。特に課外活動においてリーダーシップを発揮したかどうかを書かせるエッセイを課す大学が多いのはアメリカならではでしょう。

ちなみに世界で有数のアメリカの軍隊でも士官(稀な例外はあっても基本的に4年制大学卒)に必要なのは50%リーダーシップ、25%知能、25%体力といわれています(アメリカ軍についても大学と密接に関係しているので別記事で書く予定です)。

軍隊のリーダーシップ
Source:https://hbr.org/

リーダーシップといっても単にキャプテンや部長という肩書だけでなく、どういう風にリーダーシップを取りその経験により何を学んだのかまで深く聞かれます。「とりあえず〇〇部の部長をやって願書に書こう」と思うのは甘い考えです。

アイビーリーグのトップ校ともなると、高校生なのにどこかの会社でインターシップをしているのは当たり前、大学の教授と論文を共同執筆した、国際数学・科学オリンピックで優勝など驚くほどの高レベルが要求されます。もし楽器を習っているならトップの音楽大学に入れるレベルの腕前、美術なら全米コンテストで最優秀賞などという日本では想像もつかないような課外活動をこなしている入学志望者が多数います。

私はアメリカで塾の講師をしており、そこでアルバイトをしている高校生の中にはスーパー高校生といってもいい子が何人もいます。一体どうやってあれだけの量の勉強をしながらいろいろな課外活動もこなしているのか、というような高校生。その子たちをもってしても、課外活動が世界レベル、全米レベルではないのでアイビーリーグは願書さえ出さないという子がほとんどです。

日本の大学入試では考えられないほど課外活動が重視されるのはなぜなのでしょうか?それはいろいろな課外活動をしながら勉強をこなすことで、タイムマネジメント能力を問われているからです。アイビーリーグ他アメリカのトップ校で好成績を保つには、授業プラス週に何十時間もの勉強が必要なので、厳しいスケジュールをこなせる、と願書でアピールすることが必須となっています。「勉強だけして成績がいいのは当たり前」、で全く評価されません。

そういう意味で、全米レベルで活躍しているアスリートは高校で一定の成績を保っていると、「タイムマネージメント能力に優れている」と高評価を受けるのです。私の周りでも毎年のようにアスリート枠でアイビーリーグ校に合格する子がいます。ほとんどの子はオリンピックに出場できるレベルですが、、、

アイビー校とまではいかなくてもNCAA(全米大学体育協会)のDivision Iの有名な大学が積極的にアスリートをリクルートをするのはこのためです。ある程度のレベルでスポーツをやってきている生徒はタイムマネージメント能力に優れている(アメリカの高校はGPA2.0以下だと学校のスポーツに参加できません)、と判断されます。