この記事に書いてある事
  • アメリカ大学入試スキャンダル その手法
  • 親の威光「レガシー」 ハーバード大学への合格率が8倍近くあがる
  • 東大とハーバード大学の「レガシー」は合格率が同じ

アメリカで有名人や富裕層の親がかかわった有名校の裏口入学スキャンダル、日本でも話題になっていますね。

あえてこの時期なのは、いろいろな大学の合否が発表されるから、といわれています。秋から冬に出願した結果は一部の合格を早く出す学校はあっても、通常の合格は2、3月に集中しているのです。

特にアイビー・デーといわれる日(今年は3月28日)には私立有名校や州立校のUCバークレー(昨年まで州立ランキング1位、現在はUCLAが首位に)が同時に合否を出す重要な、一年で一番大学入試に世間の関心が集まる日。まさに合格発表のハイライト。それよりも前に関係した者に逮捕状を出す、という捜査官の信念が感じられました。

裏口入学スキャンダル
Source:https://www.cnn.com/

アメリカ大学入試スキャンダル その手法

このスキャンダルにかかわっていた親は、主に二つの方法で裏口入学を画策したようです。一つは共通テストの点数を改ざんしたり別の人にテストを受けさせたり、もう一つはスポーツ推薦入試を悪用したもの。

いろいろなテレビ局が高校生や大学生に今回の事件についてどう思うかインタビューをしていました。そのほとんどは「ずるい」「一生懸命努力した人が入るべきだった枠が取られた」などです。

でも私には違和感が。名前の出た私立有名校の学費は年間600~750万円(寮費食費授業料すべて含む)にものぼるので、一般家庭にはほぼ無縁の話だからです(下記の画像は学費が高い有名大学を載せたもの)。スポーツ推薦にしても、この枠に該当するのは相当にレベルの高いアスリート。

アメリカ私立大学費用
Source:http://dailyorange.com/

そしてこういう大学は資金が潤沢にあるので、貧しい家庭の子供は多額の返さなくてもいい奨学金がもらえたり、成績や共通テストの点が高収入の家庭の子供より低くても入れたりするので、そういう層の人が「ずるい」というのも見当違いかな、と。

インタビューを受けた生徒がとてもこの事件の影響を受けているとは思えません。

影響を受けたとすれば裕福な家庭で合否のボーダーラインにいた生徒であり、中流家庭の子弟ではありません。もちろんまれに中流家庭でこういう学校に入っている例は周りにもあります。勉学で入った場合そのほとんどは一人っ子。あとはアスリート枠ですね(注:アスリート枠で入っても全額奨学金がもらえるとは限らず、学費のたった5%のオファーを受ける子もいるし、100%のオファーを受ける子も)。

一人っ子なら全額自費だとしても有名校を卒業した後のリターンはそれに余りあるものがあるので、なんとしてでも費用を捻出するのでしょう。我が家は残念ながら(?)3人いるので私立は全く考えませんでしたが。

親の威光「レガシー」 ハーバード大学への合格率が8倍近くあがる

アメリカの詳しい入試制度についてはまた別記事にするとして、タイトルの「卒業生や関係者の子弟は優遇される」は本当の話で、各大学のウェブサイトに堂々と書かれています。日本で報道されているような寄付金を積んだ親限定でもありません。

学校にとっては寄付金が多い家庭は魅力ですが、そうでなくても卒業生の子弟(卒業生の定義は学部卒で、大学院博士課程はほとんどの場合除外、通常親か兄弟まで)は「レガシー」といわれ、特に早くに合格が出るアーリーデシジョン(ED:専願で一校のみ、合格したら行く義務が)やリストリクティブアーリーアクション(REA:ハーバードやスタンフォードが用いている制度で専願、ただし合格しても行く義務はなく、他校の通常入試には願書が出せる)の場合有利になります。

さらに大学の先生や職員の子弟も優遇されるのです。もし日本だったらこれも裏口入学に定義されるかもしれません。アメリカではあまりにも当たり前になっているのでこの制度を「ずるい」という人はそういません。

ただ、一つレガシー制度が「ずるい」といえる点は、中流の家庭ではいくらレガシーがあっても、有効に使えるアーリーデシジョンを利用するのはリスクがある、という点です。

どういうことかというと、例えば中流家庭で親のどちらかもしくは両方がハーバード大学出身でレガシー枠で合格すると、ほかの学校の通常入試の願書をキャンセルする義務があり、どの大学が奨学金を一番出してくれるかという中流家庭にとっては一番大切な要素を他の大学と比べることができなくなるのです。

実質「レガシー」はアッパーミドルクラス以上の家庭で、奨学金が出なかったとしても学費を全額自費かローンで賄う覚悟がないと利用できません。「レガシー」は富裕層のためのものだと言っていいでしょう。

アイビーリグの合格率
Source:https://www.ivycoach.com/

州立は普通レガシー制度はないし、稀な例外の私立有名校(マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア工科大学)もあります。レガシーがずるい、と思う人はこういう学校を受験すればいいのです。割合からすればレガシーがない学校の方が圧倒的に多いので、一般家庭にはそう関係のない話です。

この「レガシー」一体どれだけ合格率を上げてくれるのでしょうか?興味があるので調べてみたら、ハーバード大学の2019年度の合格率は4.5%(一番低い学校がスタンフォードで2018年度で4.3%)、「レガシー」の合格率はなんと35%程度になります。

これがどれだけ高い合格率であるかは、レガシー制度のない州立有名大学UCバークレーの2018年度の合格率が15%、UCLAが17%であることを考えると明らかです。UCバークレーやUCLAに合格するよりも、レガシー枠でハーバード大学に合格する率の方が高い、これがアメリカの大学入試の現実。

アイビーリーグの専願の合格率は赤色(画像では専願のEDとREA、ほぼ専願のEAが一緒になっています)普通入試の合格率は緑色です。レガシー枠やアスリート枠はほとんどの場合専願に含まれています。例外はレガシー枠を使っても専願で合格せず、普通入試にまわされる時です。普通入試の場合どれだけレガシーが有効なのかという数値は、見つけられませんでした。

東大とハーバード大学の「レガシー」は合格率が同じ

ついでに日本の有名大学の合格率も調べてみました。専願制度と言ってもいい国立大学の有名校の代表東大で34%、偶然にもハーバードのレガシー枠の合格率とほぼ同じです。併願可能な私立大学の慶応大学は25%、早稲田大学は17%。早稲田大学の合格率はUCLA(州立)と同じですね。

アメリカのアイビーリーグ校(アメリカ北東部にあるハーバード、イエール、コロンビア、プリンストン、ブラウン、ペンシルベニア、ダートマス、コーネルの8校)のレガシー枠と、日本の上位国立大学が、またアメリカの州立上位大学と、日本の上位私立大学の合格率が似ているというのはおもしろい偶然です。

ちなみにアイビーリーグの最高峰、ハーバード大学経営大学院卒業(MBA)の楽天創業者三木谷氏は、ハーバード大学のスクールカラーであるクリムゾン(少しくすんだ赤色)を楽天のロゴや楽天イーグルスのユニフォームにとり入れています。ただし三木谷氏は一般的には「レガシー」には相当しません。学部卒ではなく大学院卒だからです。

ハーバード大学校章
Source:https://www.harvard.edu/

とはいっても大学院だけハーバード大学を卒業したオバマ元大統領夫妻の娘が同校に入っているので何事にも例外はあります。

アメリカと日本の大学が大きく違うのは、アメリカでは堂々と卒業生の子弟や関係者は優遇されると公表しているのに、日本では公にはしていないこと。公にすればいいのでは、とも思いますができない事情があります。

アメリカの私立大学は100%学費と寄付金で経営されているのに対し、日本の私立大学は政府からの私学助成金だけでなく自治体からの補助金がある学校もあるからです。

日本の私立大学は国や自治体からの補助金を受けているので独自のルールを作ることができず、どうしても上からの規制がかかります。税金が投入されているのですから当然と言えば当然ですが、、、

日本でも寄付をするという習慣、そして寄付が100%税金控除になる制度ができれば、アメリカのような私立大学が設立される日がくるかもしれません。